
予防歯科について

歯科医院で行うむし歯や歯周病の予防というと、「定期検診で歯石を取る」ということが真っ先に思いつく方が多いと思います。これは間違いではありませんが、正解でもありません。クリーニングだけでは予防しきれない場合があるからです。ではどうするのが良いのでしょう。
予防歯科の目的
予防歯科の目的ですが、その人がむし歯や歯周病になってしまうみちすじを理解して、効果的な介入方法をご提案し、お口の環境を良い状態に保つことです。クリーニングや歯ブラシ指導も、この予防歯科の目的を果たすための方法の一つにすぎません。歯科健診を通してご自身の歯や口の状態を見直し、将来の病気のリスクを知っておくことは予防の上でもとても大切なことです。


予防歯科の流れ
初回
①
ブラッシング指導

現在のお身体のことや、ご希望などを教えてください。
②
口腔内検査、資料採得

歯肉や歯の現状を確認し、カルテや写真に記録します。
③
X線画像検査、顕微鏡検査

肉眼では見えない骨や歯根の状態を診査します。必要に応じて、特殊な顕微鏡を用いて細菌活動のチェックをします。
2回目以降
④
リスク分析

得られた情報をもとに、今後のリスクを説明します。
⑤
唾液検査

唾液検査をします。
唾液検査でわかること
●口腔内細菌の酸の産生能
●唾液の緩衝能
●歯周病のリスク
●口腔内の清潔度
⑥
予防プログラム立案、実行

分析結果をもとに、個々のリスクに応じた方向性をご提示します。


予防歯科を受診するメリット
現在の自分の口腔状態がわかる

きちんとご自身の口の中に関心を持つことで些細な変化に気が付いたり、
意識が高まり清潔に保つことができる。
現未来の自分の口腔状態が予想できる

プロによる継続的な健康管理により、今後起こりうる病気のリスクを予測してトラブルを未然に防ぐことができる。
生涯でかかる総医療費を少なくすることができる

お口の健康を保つことで全身的な病気も予防でき、
いつまでも元気に美味しく食事を楽しむことができます。
認知症のリスクが軽減される

アルツハイマー型認知症は、歯周病菌が脳に取り込まれることが原因の一つです。予防歯科へ通院することでリスクを減少できます。
口臭予防ができる

口臭を防ぐためには、口内の清潔さも重要であり、歯科医院で歯の汚れを徹底的に除去したり、プラークのコントロールを行ったりすることで、ほとんどの口臭を予防することができます。

今自分の歯が何本あるのか、どこの歯が治療してあるのかなど、まずお口の状態に興味を持ってみませんか?
定期検診を受ける割合と残存歯数


海外と比べ日本には「予防」という概念が希薄なため、多くの方がむし歯・歯周病になり、治療後も再発しています。
歯科先進国である欧米では「予防」が確立されているため、高齢になっても歯の残存数が非常に高いことが上記の表から伺えます。予防することの大切さがよくわかります。




予防歯科Q&A
- 具体的にブラッシングや定期検診以外に何があるのですか?
-
予防というのは現在の状態、つまり現状での「病気になるリスク」を予測して、それをコントロールすることによって行われます。ですので、予防の第一歩としてはご自身の状態を正確に把握することが必要です。
例えばもし現状あなたが「歯ブラシが上手にできないこと」が原因でむし歯になりやすいのなら、ブラッシングが上手になればむし歯を予防できる確率がグッと高くなります。ところがブラッシングは1日3回きちんとできていてもむし歯になる方がいます。そういう方はブラッシング以外にむし歯のリスクがあると考えます。例えば食生活や生活習慣だったり、唾液の性質かもしれません。
このようにむし歯や歯周病は、いろいろなリスクが絡まりあって初めて発病します。そしてこのリスクはずっと一定ではありません。ですから定期検診を通して「病気になるリスク」を追跡し、ブラッシングを含めた総合的な習慣を良くし続けていくことが予防には大事なのです。 - フッ素はどれくらいの周期で塗ってもらうのでしょう?
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歯科医院で塗るフッ化物の濃度は、市販品の歯磨き粉に含まれているもののおよそ10倍ほどですので、3~4ヶ月に1回くらいが望ましいです。
- 歯みがきは1日何回するのが良いのですか?
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基本は毎食後です。むし歯菌は、食事中の糖質をもとに酸を産生します。口の中が長時間酸性環境になることを避けるために、毎食後のブラッシングが望ましいです。毎食後が難しい方は朝晩の2回が良いでしょう。もし1日に1回しか磨けないという場合は、就寝前は必ず磨くようにしましょう。
- 予防歯科と歯科検診の違いは何ですか?
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予防歯科は悪くならないように、口の中にトラブルがない状態を維持することを目的としています。歯科検診はむし歯や歯周病などの悪いところを探し、早期発見、早期治療を行うのが目的です。そのため、歯科検診では予防歯科のように予防処置を施すことはあまりありません。
- 予防歯科で痛みがある処置をすることがありますか?
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基本的にはありませんが、歯石取りは、歯石が溜まっている場合は痛みを感じることがあります。不安な方は麻酔も使用可能です。