●歯周病について
ヒトが歯を失くす大きな原因は2つあります。一つは虫歯。もう一つは歯周病です。歯周病というのは、実は全世界で最も蔓延している病気としてギネス認定をされています。「地球上を見渡しても、この病気に侵されていない人間は数えるほどしかいない」(ギネスブック2001)ですが、意外と皆さんにとって歯周病は他人事です。あるいは「みんなが罹っている病気なら、それほど怖くないのでは?」という受け取り方をされている方も多いかもしれません。しかしそれはとんでもない誤解なのです。


健康な歯肉というのは淡いピンク色をしていて、歯と歯の間の歯肉の形はシャープな三角形です。
歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)の深さは3ミリ以内が目安です。 メモリのついた物差しで測定しますが、この時に出血しないということも重要です。

歯には根があり、骨がしっかり支えています。骨の上を歯肉が覆っています。歯肉の周りに歯石やプラークがつきっぱなしになっていると、歯肉が炎症を起こして赤くなったり出血したりします。この状態は歯肉炎と言って、骨にはまだ影響が出てない状態なので歯周病とは区別されます。

歯肉炎が長く続くと、細菌が組織の深くまで侵入してきます。すると免疫の細菌が戦争(炎症)を起こします。その戦いが長く続き激しさを増すと、炎症の余波で骨が壊れていきます。ここまで進行した状態が歯周病という状態です。
昔は歯石が原因と言われていました。ですが、歯石を取っただけでは治らなかったり、逆に歯石だらけでも歯周病にならない人もいます。今は少しづつ解明されてきて、歯周病には原因となる特定の菌種がいることがわかっています。これは、虫歯菌とはまったく別物の菌ですので、一緒にしないように注意してください。虫歯菌は空気のあるところに生息しますが、歯周病菌は空気を嫌います。虫歯菌は糖を栄養にしますが、歯周病菌は鉄を栄養素にして活動します。鉄は、ヒトの血液のヘモグロビンを分解して得られます。
つまり歯周病菌は、空気の薄い歯周ポケット内でひっそりと身を潜めており、歯肉から出血があると増殖するのです。歯を磨く時に出血するようになる、というのは歯周病発症のサインです。

歯周病治療の最初の目標は、現状より悪化しないように歯周病菌の栄養の元となる「出血」を止めることです。そのためには
1、ブラッシング指導

2、衛生士さんによるSRP:細菌と歯石の機械的除去

3、生活習慣指導

4、メインテナンス

が必要になります。止血に成功すれば、歯周病菌が増殖できなくなり、細菌の勢いが弱くなります。すると歯肉の状態が改善するので、そこからは再発の予防に移っていきます。 歯周病というのは、実は「完治」がありません。上記のように治療すれば出血が止まったり、歯肉の状態が改善したりはします。しかしこれは歯周病菌が完全にいなくなるわけではないのです。生き残った歯周病菌は潜伏し、再発を狙います。歯周病には再発の危険がどうしてもつきまとうので、完治はないということです。
歯周病菌の存在は歯周病にとって大きな要因ですが、毎日の生活環境も歯周病の発症、進行に大きな影響を与えます。
代表的な危険因子は
肥満(BMI25以上)

喫煙

飲酒
です。肥満や運動不足の結果、糖尿病を発症した場合は、さらにリスクが上がります。喫煙は、受動喫煙も危険因子となります。喫煙者と一緒にいることが多い場合は、自身が吸っていなくても注意が必要です。飲酒に関しては、アルコール摂取で顔が赤くなる人は歯周病のリスクが高いと言われています。
歯周病治療には、口腔ケアと合わせて生活習慣の見直しも必要になってくるケースがあります。