今回は、ペットボトル症候群とむし歯リスクの関係についてご紹介します。
これからの暑い季節、ペットボトル飲料を持ち歩いて日常的に飲む方も多いのではないでしょうか。特に、スポーツドリンクや清涼飲料水をこまめに飲んでいる方は、注意が必要です。これらの習慣が「ペットボトル症候群」と呼ばれる状態を引き起こし、全身の健康だけでなく、歯にも深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群とは、清涼飲料水やスポーツドリンクを習慣的に飲み続けることによって起こる「急性の糖尿病症状」を指します。特に夏場、喉が渇いたからと頻繁にペットボトル飲料を飲み、知らず知らずのうちに大量の糖分を摂取してしまうことで、血糖値が異常に上昇してしまうのです。
これは医学的には「ソフトドリンクケトーシス」とも呼ばれ、特に若年層や男性に多く見られます。主な症状には、強い口渇、頻尿、倦怠感、体重減少、意識障害などがあり、放置すると命に関わる危険性もあります。
甘い飲み物とむし歯の深い関係
ペットボトル症候群の全身へのリスクが語られる中で、もう一つ見逃せないのが「むし歯」の問題です。実は、清涼飲料水やスポーツドリンクが習慣化している方の多くに、むし歯リスクが非常に高い傾向が見られます。
清涼飲料水に含まれる糖分は、むし歯菌(特にミュータンス菌)のエサとなり、歯の表面で酸をつくり出します。この酸が歯のエナメル質を溶かし、やがてむし歯となっていくのです。
特に問題なのは、「ちびちび飲み」や「寝る前の水分補給」といった飲み方です。長時間にわたり口の中に糖分がある状態が続くと、唾液による自浄作用が間に合わず、むし歯リスクが飛躍的に高まります。
スポーツドリンクも安全とは言えない?
「ジュースは控えてるけど、スポーツドリンクなら体にいいと思って飲んでる」という方も多いでしょう。しかし、市販のスポーツドリンクには100mlあたり約4〜6gと多量の糖分が含まれています。500mlのペットボトル1本で、20〜30g程度の糖分を摂取する計算です。これは、角砂糖5〜7個分に相当します。
また、スポーツドリンクや清涼飲料水は酸性度が高いため、歯の表面のエナメル質を直接溶かす「酸蝕症」の原因にもなります。つまり、むし歯と酸蝕症の両方のリスクを抱えることになるのです。
なぜ「ちびちび飲み」が特に危険なのか?
ペットボトルを手元に置いて、喉が渇いたら少しずつ飲む「ちびちび飲み」は、一見体に良さそうに思えます。しかし、歯の健康にとっては大きなリスクとなります。
通常、食事や飲み物を摂ると口腔内は酸性に傾きますが、唾液の作用により30分〜1時間ほどで中性に戻ると言われています。しかし、ちびちびと何度も口にすると、この回復時間が無くなり、常に口の中が酸性状態になるのです。これが続くと歯が溶け続け、むし歯が進行しやすくなります。
お口の健康を守るためにできること
では、ペットボトル症候群やむし歯を防ぐために、私たちにできることは何でしょうか?いくつかのポイントをご紹介します。
・飲み物の選び方を見直す
喉が渇いた時は、水や無糖のお茶を選ぶようにしましょう。甘い飲み物を飲むならば回数を減らし、だらだら飲まないように意識することが大切です。
・飲んだ後のうがいや歯磨き
清涼飲料水を飲んだ後は、できれば水で口をゆすぐか、しばらくしてから歯磨きを行いましょう。酸性飲料の直後は歯の表面が弱くなっているため、すぐにゴシゴシ磨くのは避けてください。
・就寝前の甘い飲み物は控える
夜間は唾液の分泌が減るため、むし歯菌が活発になりやすい時間帯です。就寝前のスポーツドリンクや甘い飲み物は控えることが鉄則です。
・定期的に歯科検診を受ける
普段のケアだけでは分からないリスクをチェックするために、歯科医院での定期検診とクリーニングを受けましょう。早期発見が、歯を守るカギとなります。
まとめ
ペットボトル飲料は現代人にとって欠かせない存在かもしれませんが、便利さの裏には健康リスクが潜んでいることを忘れてはいけません。ペットボトル症候群は、全身の健康を損なうだけでなく、むし歯や酸蝕症といったお口の健康にも直結しています。正しい知識を持ち日常のちょっとした習慣を見直すことで、健康な歯と体を守りましょう。
お口の中で気になることがありましたら、かけまちコミュニティー歯科にご相談ください。